ESG経営を支える基盤
責任ある調達
長期ビジョン「Vision 2030」のビジョンステートメント「“Innovation for the Earth”サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え、“未来につづく安心”を創造する」に基づき、調達活動においても説明責任、透明性、ステークホルダーの利害の尊重、変革や進化を続けなければならないと考えています。従来のQ(品質)・C(価格)・D(納期)に加え、より社会と環境に配慮した『責任ある調達』を進めるべく、現中期経営計画では、調達基本方針・ガイドライン・調査の見直しや追加を実施しました。
次期中期経営計画では、人々、環境、社会に対して、 企業が原因、助長または直接結びつく負の影響を考慮したサプライヤー・デューデリジェンスにおける全サプライヤーのリスト化に取り組むとともに、デューデリジェンスの実効性向上に向けての検討を開始します。また、企業に対する社会からの要請がさらに高まるとの認識のもと、海外の法規制や指令の動向を踏まえて適時適切に見直しを図っていきます。
調達基本方針の改定
積水化学グループではCSR経営推進の中2006年10月に現在の『積水化学グループ調達基本方針』をCSR調達方針として制定し、当社グループのWebサイトにも掲載、開示を行いました。その後の社会課題要請に対して、2014年に「紛争鉱物について」、2018年に「木材調達について」を付加、2019年には環境への配慮を充実させてきました。
しかしながら、現在の『積水化学グループ調達基本方針』ではサプライチェーンに対する社会要請の多様化にともなう人権や持続可能性、腐敗防止など、近年のさらなる社会課題要請に対しては十分には対応できていない方針になっています。
そのため今年度、調達基本方針の改定を検討、制定し2023年4月1日※より当社Webサイトへの掲載を行い広く周知しました。
- 「調達基本方針」はこちらを参照
持続可能な調達ガイドライン(サプライヤー行動規範)
当社グループおよびお取引先が調達において目指す項目を、「持続可能な調達ガイドライン(サプライヤー行動規範)」としてまとめています。国連グローバル・コンパクト10原則、ビジネスと人権に関する指導原則、および積水化学人権方針に沿ったものであり、当社および製品の生産に関わるすべてのお取引先の皆様に対して、遵守すべき基準としています。
お取引先には本ガイドラインの趣旨と内容のご理解と遵守をしていただき、ともに持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいけるようご協力をお願いしています。
現中期経営計画の重点実施項目 | 内容 | 目標 | 結果 |
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重点リスクの 管理範囲拡大 |
2021年 | ||
・CSRアンケート調査の国内外サプライヤーに一斉調査実施 | 回答率 80% |
回答率 67% |
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2022年 | |||
・紛争鉱物調査項目拡大および海外関係会社の調査実施 | 実施率 100% |
実施率 100% |
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管理規定整備 | 2021年 | ||
・調達ガイドライン(サプライヤー行動規範) | 策定 | 〇 | |
・「持続可能な調達」調査マニュアル | 改訂 | 〇 | |
・「持続可能な木材調達」調査マニュアル | 改訂 | 〇 | |
・「責任ある鉱物調達」調査マニュアル | 改訂 | 〇 | |
2022年 | |||
・調達基本方針 | 改訂 | 〇 | |
・「持続可能な木材調達ガイドライン」 | 策定 | 〇 | |
自己監査の運用展開 および外部評価の活用 |
2022年 | ||
・CSRアンケート調査の結果から抽出したハイリスクサプライヤー候補13社へのヒアリング実施 | 実施率 100% |
実施率 100% |
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・上記の内、海外1社に外部機関と一緒に監査実施 | 実施 | 〇 |
当社グループの調達に関しては、コーポレート購買部門が中心となり、事業場・グループ会社購買部門や海外統括グループと協力して、「持続可能な調達」の基本方針やガイドラインに沿った取引を行っています。
サプライチェーン全体でより適切な調達を実現するため、1次お取引先を通じて、2次・3次サプライヤーに対しても社会的に責任ある状況を実現・維持するよう働きかけています。
取り組みの推進にはお取引先との協同が欠かせないことから、「持続可能な調達」や調査に関するお取引先の理解促進を図っており、「持続可能な調達」の基本方針とガイドラインについては、海外お取引先向けに英語、中国語版をウェブサイトで公開しています。
「持続可能な調達」調査に基づくサプライチェーン構築
責任あるサプライチェーンを構築し、持続可能な調達を実現・維持するため、お取引先が社会的に責任ある状況にあるかを評価する「持続可能な調達」調査を行っています。調査結果に基づき、課題がある場合はお取引先とともに解決に取り組みます。
2021年度、「持続可能な調達」調査を大幅に改訂しました。調査項目を従来のISOに基づいて作成したオリジナルのものから、GCNJ(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン事務局)作成の「CSR調達セルフ・アセスメント質問表」最新版に変更しています。これにより、人権に関する項目を含めより網羅的な調査を行うことが可能になりました。また、従来は調査実施のタイミングも統一されていませんでしたが、グローバルで同時に調査を実施するよう見直しました。調査対象についても、適宜拡大していく予定です。
従来の調査 | 2021年度以降の調査 | |
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質問表 | ISO等を参考にした 当社グループオリジナルの質問表 |
GCNJ「CSR調達セルフ・アセスメント質問表」 最新版を用いたアンケート |
調査対象範囲 | 年間30百万円以上の取引のある購入先、 グループ会社ごとに累計上位80%の購入先 |
年間30百万円以上の取引があり、 一定の資本金を持つ主要な購入先 |
スケジュール | 順次実施(全対象の調査完了までに概ね3年) | 3年ごとに一斉調査を実施 |
「持続可能な調達」調査プロセス
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調査対象:1 製品を構成、または付随する原材料および資材等(梱包材含む)のお取引先
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2ユーティリティのお取引先
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3生産設備、工事等のお取引先
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4お取引先が商社の場合、商社および製造元
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5取引先が積水化学グループ会社の場合は対象としません
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実施頻度:新規お取引先に対しては都度、既存お取引先については3年に1度
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調査方法:「CSR調達セルフ・アセスメント質問表」最新版を用いたアンケート
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調査体制:コーポレート購買部門が調査全体を管理し、お取引先へのアンケート依頼・回答収集等は事業場・グループ会社購買部門が担います。海外のお取引先については、海外統括グループとグループ会社購買部門が担当します
2022年度「持続可能な調達」調査
2021年度実施した「持続可能な調達」調査で自己評価が低かったお取引先13社に対し、2022年度は潜在リスクの有無を確認する目的で直接ヒアリングを実施し、状況を確認しました。
その結果に基づき、「持続可能な調達」に関して協同で改善に取り組むことに同意いただいた海外メーカー1社に対し、コンサルタントと一緒に現地で労働者へのヒアリング等を実施し、改善への取り組みを進めました。
サプライヤー行動規範への署名依頼
「持続可能な調達」調査のアンケートを行うさいに、お取引先に対して「サプライヤー行動規範」への署名を依頼しています。「サプライヤー行動規範」は、お取引先が安全な労働条件、公正で経緯のある従業員の処遇、倫理的慣行の基準を確実に高く維持するために作成するものです。当社グループは行動規範の中で、お取引先のサプライチェーン(2次・3次サプライヤー)に対しても、社会的に責任ある状況を実現・維持することを求める項目を設けています。これにより、持続可能な調達の拡大を図っていきます。
パートナーシップ構築宣言
2022年3月、「サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携(企業間連携、IT実装支援、専門人材マッチング、グリーン調達等)」「振興基準の遵守」に重点的に取り組むことを宣言した『パートナーシップ構築宣言』に署名しています。
パートナーシップ構築宣言
2022年度「責任ある鉱物調達」調査
2022年度、新たに見直した「責任ある鉱物調達」調査マニュアルをもとに調査を実施、調査に先立ち、対象紛争鉱物(武装勢力への資金源となる鉱物)の背景や社会的な変化(児童労働などの人権侵害)について、社内研修会を実施し、調査への理解を深めました。
対象鉱物を扱っている国内35拠点、海外16拠点を対象に調査し、その結果、国内においては対象鉱物を含む原材料の内、90%は製錬所を特定、5%は非開示、5%は不明。海外においては78%は製錬所を特定、2%は非開示、19%は不明という結果になりました。2023年度は非開示および不明のリスクレベルに沿った対応を検討していきます。
「責任ある鉱物調達」調査の変更点
従来の調査 | 2021年度以降の調査 | |
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対象リスク | 武装勢力の資金源か否か |
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対象地域 | コンゴ民主共和国および周辺国 合計:10ヶ国 |
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対象鉱物 | 3TG(タンタル、タングステン、スズ、金) | 3TG+コバルト、マイカ |
対象原材料 | お客様から調査依頼があった製品の原材料 | 対象鉱物を含有する原材料 |
報告内容 |
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持続可能な木材調達
当社グループは事業活動において、木そのもの、または木を原材料とするものを調達しており、このことが人権、環境に関して負の影響をもたらす可能性があることを認識しています。
また2021年11月開催のCOP26で、日本を含む世界100ヶ国超の首脳が2030年までに森林破壊を終わらせると約束する文書に署名しました。
これらを受けて、2022年度はこれまでのデュー・ディリジェンスを大きく進化させました。
具体的には「2030年:森林破壊ゼロ」の目標を新たに掲げ、その達成に向け、「木材調達方針※」を見直しました。
「木材調達方針」を参照
従来の方針 | 2022年以降の方針 | |
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環境 | − | 持続可能な利用につながる適切な管理が行われている森林からの木材の調達を進めます |
− | 自然林の他用途への転換につながらない木材の調達を進めます | |
− | 生物多様性の保全など保護価値の高い森林以外からの木材を調達します | |
− | 絶滅が危惧されている樹種以外の木材を調達します | |
使用済みの木材・木質材料、または、未利用の間伐材や末木枝条などを使用していきます | リサイクル材、未利用の間伐材等の資源循環に貢献する木質材料を調達します | |
− | 森林の増加につながる活動を実施している調達先を積極的に採用します | |
社会 | − | 伐採や木材製品の加工も含めた商流において、地域社会へ悪影響を及ぼさず、地域の文化、伝統、経済を尊重した調達を進めます |
− | 先住民の権利を尊重した調達を進めます | |
− | すべての労働者の権利を尊重した調達を進めます | |
ガバナンス | 製品に使用する木材は合法的に伐採された木材を使用 | 森林調達に関わるすべての法令を遵守します |
木材原料の伐採地域・樹種・数量などを少量調査し、トレーサビリティを確保します | 木材および木材製品のトレサビリティを確保し、原産地が明らかでかつ問題のない調達を進めます |
そして、木材調達方針に沿った調達実現のために「持続可能な木材調達ガイドライン」を新たに制定し、これまでの合法的な木材調達は当然のこととして、さらに森林破壊による先住民の人権や環境への負の影響を低減することを目指して、取り組みを開始しました。
取り組み内容は、調達先57社へ樹種、伐採地等のアンケート調査を行い、そのうち原材料が絶滅危惧種で伐採地が高リスク国である材料の調達先へヒアリングを実施し、トレーサビリティを明らかにしてきました。調査の結果、直接の購入先ではありませんが、サプライチェーン上でリスクがあるサプライヤー4社が特定できました。今後は特定されたリスクの低減に引き続き取り組んでいきます。
エリア別調達比率は以下の通りです。
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