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【News】絶望と成功を積み重ねて。「今は楽しい人生」/パラ陸上 近藤元

May 9, 2024

絶望と成功を積み重ねて。「今は楽しい人生」/パラ陸上 近藤元

「自分にできないことはない」。その自信は大切とわかっていても、本気で信じるのは簡単ではありません。挫折と成功の積み重ねだけが、その確信につながるのだと思います。

パラ陸上100m・200m・走幅跳の日本代表として、今年5月の神戸2024世界パラ陸上でのメダル、パリ2024パラリンピック出場を狙う積水化学所属の近藤元(はじめ)選手。バイク事故で右脚を失った彼は、一度は絶望感を味わいながらも、「この経験が今後の輝く時間に繋がればいい」と前進し続けます。


絶望と成功を積み重ねて。「今は楽しい人生」/パラ陸上 近藤元

◆このまま何もしない自分だったら、“自分自身”が納得しない


幼少期は空手に体操、小学校1年生から6年生までは野球少年だった近藤選手。足の速さが活かせると思って、陸上部に入ったのは中学生の時。その頃から短距離選手だった彼に大きな転機が訪れたのは、2020年の12月11日。自身が20歳の時でした。

「バイク事故に遭って、3週間意識がなく、その間に心臓が3回止まるなど、生死をさまよいました。目を目覚ました時には、意識が朦朧としていて、脚を失っていました」

「右脚がないと認識した直後は特に落ち込みとかはなかった」と、近藤選手は言います。その後、義足でリハビリを始めたり、今も残っている右手麻痺のため元々右利きだったのを左利きに変えるトレーニングを始めると、何もできない自分を直視して落ち込みました。

「歩くこともできず、何もできない状態で、その現実を受け止めた時から絶望感に陥りました。元来明るい性格でしたが、死にたい気持ちでいっぱいで、毎日生きている時間が苦痛だった。人とのコミュニケーションも好きなはずでしたけど、全然喋らなくなり、性格が変わってしまうんじゃないかと思うような状況でした」

それでも、持ち前の負けず嫌いの性分が、自身を人生の新たなステージに導きます。

「このまま何もしない自分でいても、自分自身が納得しない。うまく歩いたり日常動作も、脚がなくなる前と、なんら変わりない生活にしたかった。歩行や動作がうまい人の動画を見て、『この人にできるなら、自分もできるはずだ』と思って、頑張りましたね」

当然、その気持ちだけで全てうまくいくわけではありません。少なからず挫折と成功を繰り返し、できるようになったら新しい課題にぶつかる。すると、またできるようになって…の繰り返し。そして、今では不自由なく日常生活を送ることができるようになった近藤選手は、明確な言葉でこう話します。

「今は、脚があった時よりも楽しい人生を歩んでます」


絶望と成功を積み重ねて。「今は楽しい人生」/パラ陸上 近藤元

◆パラ陸上と向き合ったからこそ立てた舞台がある


パラ陸上を始めたきっかけは、偉大な先輩パラアスリートとの出会いがあったからでした。

「2021年の10月10日に退院して、その後すぐにパラ陸上のレジェンド山本篤さんが開催する『ブレードアスリートアカデミー』というイベントに参加したんです。元々パラ陸上をやろうと考えていたし、健常時も右足前十字靭帯損傷や断裂など怪我に悩まされて悔いも残っていたので、右脚がなくても走りたいと思っていました。目覚めてからも陸上を辞めようと考えたことは全くないですね」

パラ陸上のアスリートとして、トラックに復帰した近藤選手。もちろん、前のようにうまくはいきません。たくさん、戸惑うこともありました。

「義足になったことで足を設置するタイミングも変わりますし、何事も一からスタート、感覚も全然違いました。僕の場合は膝がないので、力を入れていると義足と膝がロックされて折れないですが、気が緩むと膝が折れてコケてしまう。その恐怖心と闘うことから、第1段階のスタートという感じでした」

耐えられるポイントをギリギリまで探り、限界に近い動きをする。それによって競技レベルも上がる。短距離だけでなく走幅跳にも取り組み、自分の可能性を拡げていった近藤選手。その地道な努力は実を結び、次第に結果が出始めると、2023年6月のジャパンパラ競技大会では、100m・200m・走幅跳の3種目すべてを制し3冠達成。同年7月のパリ世界パラ陸上に出場と、日の丸を背負うパラアスリートに成長しました。

激動の4年間を振り返り、近藤選手は、こう語りかけます。

「色々落ち込んだりもしましたけど、ホンマに珍しい体験、一部の人しかできない経験を積ませてもらいました。それは、自分を見つめ直す、いいきっかけでもあったと思います。脚を失っていなかったら、社会人で陸上を続けたかもわからないし、世界大会に出られたかもわからない。こうなったからこそ立てた舞台もある。苦しい時間はありましたが、その体験が、これからの楽しい時間や輝ける時間に繋がっていけばいいなと思います」
どんな逆境にも負けない、前向きな姿勢で生きてきた近藤選手。その視線は、どこまでも明るい未来の方へ向いています。


絶望と成功を積み重ねて。「今は楽しい人生」/パラ陸上 近藤元

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