新規「異方導電性ペースト」を開発しました

―加熱のみではんだ粒子が電極に自己凝集し、金属結合を形成―

現在では、お取り扱いはしていません(2024年3月追記)

高速伝送・高許容電流が可能になり、高接着、高信頼性を確保

低背接続、ファインピッチ接続、接続し難いCu(銅)電極への接続も可能に

 

 積水化学工業株式会社(社長:根岸修史、以下当社)高機能プラスチックスカンパニー(プレジデント:加藤敬太)では、加熱のみではんだ粒子が電極部分に自己凝集し、金属結合を形成する異方導電性ペーストを開発しました。
電子機器の回路基板とFPC(フレキシブルプリント基板)、電子部品などの接続に従来必要であった圧着工程が不要になり、加熱のみで接続が可能になります。接続に用いられているコネクタやはんだ接続に代わる用途の開拓を進めます。

 

新規「異方導電性ペースト」開発

 

1.開発の背景 

 高機能プラスチックスカンパニーでは、“Chemical Solution”をスローガンに掲げ、「エレクトロニクス」、「車輌・輸送」、「住インフラ材」、「ライフサイエンス」の4戦略事業分野を中心に、機能性の高い樹脂加工品や原料樹脂をグローバルに提供しています。
エレクトロニクス分野においては、独自の微粒子技術、樹脂配合技術を保有し、FPD(フラットパネルディスプレイ)向けを中心に事業展開しています。これらの技術を活かし新規材料として、実装分野への参入を目指してきました。

 

2.開発の経緯 

 昨今、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の高機能化に伴い、高伝送速度・高許容電流の対応が求められるなか、一方では小型・薄型・軽量化といったニーズにより、一層の高精度・高信頼性への要求が高まっています。
従来、回路基板とFPCの接続には圧着処理が必要なため、特殊装置・設備を導入しなければなりませんでした。圧着処理を不要とする新規異方導電性ペーストの開発により、一般的加熱のみでの接続を可能にし、新たなプロセス・生産技術の提案が可能となります。

 

3.新規異方導電性ペーストの概要と特長 

構造・機能 

 この度開発した異方導電性ペーストは、熱硬化性樹脂にはんだ粒子を均一に分散したペースト状の樹脂接続材です。電子部品などの電極同士を電気的に接続し接着固定する機能を有します。

 

原理

 

 電極間にペーストを塗布した状態で圧着なしで加熱(リフロー炉、オーブン、ホットプレート、スポット加熱など)することより、はんだ粒子が電極部分に自己凝集し、電極と金属結合を形成します。
基板とFPCなどの部材をセットする時に、上下電極の位置にずれが生じていても、一定条件下※1であれば、はんだ粒子自ら位置合わせをする機能が働きます。これにより顕微鏡を使わずに、位置合わせが可能になります。
そして、周囲の熱硬化樹脂が硬化して、接着固定されます。

 

 

新規異方導電性ペーストの原理

 

 

 

 

 

 

 

※1条件内容:電極幅の半分以下程度のずれで、ピッチ幅=150μm程度。重い部品は不可ですが、FPC程度は問題ありません。

※2セルフアライメント性:はんだ粒子が集まる時に電極同士の位置合わせを自ら行います。

 

接続構造

 

 上下電極部分のみにはんだが存在する状態で接続し、その周囲は樹脂が硬化した状態で接着固定されます。 

新規異方導電性ペーストの接続構造

 

 

 

 

技術の独自性・スペック・特長

 この度当社が開発した新規異方導電性ペーストは、これまでの異方導電性ペーストによる粒子の【点】接触接続から、【面】での接続になるため、高速伝送、高許容電流などが可能になります。また、上下電極部、接続部分が熱硬化樹脂で覆われた形で接着固定されるため、高接着、高信頼性を確保します。
コネクタ接続に比べ、低背(薄型)接続が可能になります。また、電極以外のスペースに導電粒子が存在しないため、従来のはんだ粒子を用いたタイプの異方導電性ペーストに比べファインピッチ接続が可能になります。
Au(金)電極のみでなく、酸化し接続し難いCu(銅)電極でも、新規異方導電性ペースト自体が電極表面の酸化膜除去機能(フラックス機能)を有しているため、接続が可能になります。

 

 

スペック

 

高速伝送対応=USB3.0以上

 

低背接続=0.1mm厚以下

 

ファインピッチ接続=150μmピッチ(コネクタ1/2)

 

 

 

信頼性

 

結果

条件

 

接着力

48N/cm

90°peel

 

熱衝撃

1000cycle

-40/85℃

 

耐湿性

1000h

85℃85%

 

絶縁性

1000h

85℃85%15V

 

 

 

実装条件

 

 

低温、即硬化:加熱×時間=180℃×15秒~140℃×2分(参考範囲)

 

4.今後の展開について 

 コネクタ代替をはじめ、FPC接続、リジットフレキシブル基板向け、部品実装、そのほか多くの接続用途への展開が可能と見込んでいます。今後、サンプルの提供活動を通じて、さまざまなニーズに対応し、用途開拓を進めます。
また、従来型の粒子が均一に分散した状態で接続できる「圧着装置使用向け」、「PET基材回路接続用」異方導電性ペーストもラインアップしており、2014年6月4日~6日に東京ビッグサイトで開催される「JPCA Show2014」への出展を予定しています。
当社は今後もモバイル端末をはじめとするFPD機器の高性能化に貢献していきます。